八戸情報誌 amuse 2012年8月号

はちのへ演劇祭について、短編作品「サルビア」の演出であり、短編作品「リュックシャック」と長編作品「銀河鉄道の夜へ」の出演者でもある、中嶋博之さんからアミューズに寄稿いただきましたので、掲載します。

「そんなこんなで演劇祭」
 中嶋博之/はちのへ演劇祭短編作品演出家・出演者、長編作品出演者


d0260262_22301542.jpg きっかけはまったくの偶然だった。始めたばかりの外回りの仕事で市内の高校を訪れた時のことだ。ずんぐりとした大きな頭と、恰幅の良い背格好。見知った顔に私はすぐさま駆け寄った。挨拶をしながら、私のことを、覚えているだろうかという不安はすぐに消えた。
 十年以上前、高校生だった私は演劇に出会い、その魅力に取りつかれた。中心街に市内各校の演劇部員が集まる喫茶店があって、私はすぐにそこの常連になった。だれと待ち合わせているというわけでもないのだが、放課後にそこに行くと、何故か必ずどこかの高校の演劇部員が窓際の席に座っていて、私に手を振るのだった。コーヒー一杯で数時間、部活の人間関係や恋の悩み、将来の夢、好きな本や音楽、そしてたまに演劇論。話した内容など、今ではほとんど思い出すこともできないが、出会った仲間のことは忘れようにも忘れられない。
d0260262_2231462.jpg 高校の部活という枠を超えて、市内の演劇部員たちが集まるようになったはっきりしたきっかけは定かではないが、1997年に始まった、「三八地区高等学校演劇部合同ミュージカル公演」が大きな役割を果たしたのではないかと思う。私はその三年後、第二回の合同ミュージカルに参加し、多くの仲間と出会った。
 そして十数年後、東京での仕事を辞め、書店の外商という職を得た私の目の前には、あの時の合同ミュージカルを指導してくださった、柾谷伸夫先生の変わらない姿があった。
「今度、はっちで演劇祭をやるんだ」
 私はすぐにかつての仲間に連絡を取った。みな演劇という響きに興奮しているのがわかった。
d0260262_22323819.jpg 十月二十二日から十一月十一日までの三週間、ポータルミュージアムはっち二階シアター2にて「はちのへ演劇祭」が開催される。
 公募を含めて集まった参加者たちの置かれている状況は様々だ。仕事もある。子どもがいる者もいる。山形で劇団を主宰していたという猛者から、芝居は全く初めてという者までそのキャリアも色々だ。だが、私はあまり心配していない。芝居にはそんな現実とかブランクとか、些細なことは消し去って、夢中にさせてくれる魅力が必ずある。




d0260262_22363741.jpg中嶋博之プロフィール
八戸市内の書店に勤めるギリギリ二十代。無難で当たり障りのないコメントに定評がある。周囲に多大なメーワクをかけながら芝居に関わっている。密かに新たな演劇集団結成を画策中。
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